この調律されたように見える世界も、歪みが生んだ。
歪みがなければ、調律も、その歪みによって生まれる歪みも生まれない。
土台は歪んでるんだ。
自分だけに思考する力があって、他の、僕以外の人間には考える力がない、彼らは誰かが与えた時間を消費するだけの生物なのではないか。と、ふと思った。
みんなが取り憑かれたように笑っていた、僕はあの時の幼稚園の砂場を忘れない。
あの時の一瞬の安堵とその後の孤独感も。
僕は君の眼で見れない。
君は僕の耳で聞けない。
話しても、聞いても、触ってもね。
そんなこと知ってるのも、知ってる。
僕らは、察しと思いやりが強すぎて近づけないんだ。
エンジンを切った車の中に思考が巡る。
靴を脱ぐと同時に雨の音に気づく。
水を一口する。
僕は窓越しに外灯を眺める患者。
雨粒のなかに飲み込まれて、歪んだ世界を見よう。