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Apr 18, 2012

バングラデッシュの転校生

今まで避けてきた、世の中の一般に慣れようとしている。人より幾分遅いと思う。同じ年代の人が経験する何年も後だ。
なぜかというと、一般的と思っていた自分の思想が決してそうではないと気付けるまで時間がかかった。 
僕はそういう環境で育ってきたのだ。これはいわゆる過保護とか甘えとかそういう類いのものではない。
ただ、なんとなくそうきてしまっただけだ。
周りは若者とか、世代で片付けることかもしれないけれど。

一般に慣れることは意外に刺激になる。新鮮で、学んだ気になる。
いやこれは、一般に慣れようとしている自分に感心しているだけかもしれない。
だとしても、なにかをしている気にはなれる。その間は自分でなくいられる。

僕はそんな時、バングラデッシュからやってきた転校生のことを思い出す。
僕らは彼を好意的に受け入れたし、彼も僕らを敵視したりしなかった。
けれど、彼は孤独だったのだろう。
ある日、教室の窓ガラスを割った。
彼はその右手をガラスの破片で赤く染めながら、立ち尽くしていた。
彼は故意に割ったのだ。

僕らと彼に何の違いがあったか。
彼は肌こそ少し黒かったが、顔はアジア人のそれで、僕らとそれほど違いはなかった。
僕らと同じように走れるし、笑える子だった。それも、とても愛らしい顔で笑った。
僕らと彼の違いは日本語が話せるかどうか、その違いしかなかった。