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Jul 26, 2012

こえはきこえた

天井に止まった虫を「ほら、竜がいるよ」と言ったら、君がくすっと笑って、今度はカーテンの裾を指差して「こんなところでオーロラが見れるなんて」
もし、この部屋がひとつの宇宙であると言っても、君はまたくすっと笑ってくれるか?
力が抜けて少し重たくなった頭で、どんな夢を見てるのか、僕にはわからない。
右肩の上に左耳の形をはっきり感じながら、感覚が研ぎ済ませれていって、時間さえ無限に思えてくる。
それでも、時間が経てば君は目を覚ますだろうし、僕は無意識に眠りに落ちるのだから、時間は決まって有限なのだ。

僕はこの時間にふたりのことを考えている。互いの人生を決める前の若いふたりだ。
互いに互いを思っているだけでは、窮屈を感じる年頃。
月の照らす空の色に不思議を感じる季節。
その月の裏側で何が起こっているかは知る由もなく、知ったところでどうしようもない時代。
ただ、照らされているだけの僕ら。
互いの距離を計りかねている僕ら。
回した指先でそっと肌を触れてみる。力を入れると皮膚と皮膚がくっついてこのまま離れないのではないかとさえ錯覚する。
悲しくも指は離れる、また触れる、離れる、触れる......
自身と他者の限界に折り合いをつける夜。
君と僕の間に立ちはだかったアイツの正体はおそらく僕の自意識だったのだろう。